コミックス8巻の70話からスタートする鬼滅の刃の新編「遊郭編」。
派手好きの音柱・宇髄天元をメインキャラクターに据えた展開になっています。
あなたは宇髄天元にどういった印象を抱かれているでしょうか。
- 派手好き?
- 女好き?
- 意外と真面目?
そんな彼には、3人もお嫁さんがいます。
- 雛鶴(ひなつる)
- 須磨(すま)
- まきを
本記事では、宇髄天元のモチーフや彼の3人の嫁(雛鶴/須磨/まきを)の名前の由来を考察します。
この記事を読めば、
鬼滅の刃の「遊郭編」を3倍
楽しむことができます。
鬼滅の刃の「遊郭編」についての詳細情報は、「鬼滅の刃アニメ2期はいつから?どこまで?遊郭編では宇髄天元が大活躍!」をご覧ください。
【関連記事】鬼滅の刃アニメ3期はいつから?原作のどこまで?【最終章・無限城編】
宇髄天元の3人の嫁(須磨・まきを・雛鶴)の名前の由来を考察
宇髄天元の嫁であり、部下であり、くノ一の雛鶴(ひなつる)、須磨(すま)、そしてまきを。
彼女たち3人の名前の由来は、『雛鶴源氏物語 須磨の帖』が元になっている可能性が極めて高いです。
ず〜〜っと「須磨」「雛鶴」ってどっかで聞いたことあるなと思ってたんだけど、(中略)嫁三人が『雛鶴源氏物語 須磨の帖(まき)』を指してることに今更気付いた。
TwTimez
Twitter上でも話題になっていました。
「源氏物語」といえば、色男である「光源氏」がたくさんの女性と関係を持つ華やかな物語…
そんなイメージが強いかと思います。
派手好きの音柱・宇髄天元のイメージにも合うため「嫁の名前も光源氏の相手女性が由来なのでは?」と考えてしまいますよね。
しかし、源氏物語には「雛鶴(ひなつる)」、「須磨(すま)」、「まきを」という女性が登場するわけではありません。
宇髄天元の嫁である3人の人物像と共に、その由来を解説します。
雛鶴(ひなつる)の名前の由来
雛鶴は、宇髄の嫁の内の1人であり、3人の中で最年長。
21歳です。
※宇髄天元の年齢は23歳
「遊郭編」では、吉原に棲まう鬼を見つけ出すべく「京極屋」に潜入。
花魁に化けた鬼を見破ったもののスパイだということを悟られ、やむなく自分で毒を飲み病気のふりをして吉原から脱出しようと試みました。
「雛鶴」の名前の由来は、「源氏物語」にてその名前を冠したシリーズ「雛鶴源氏物語」。
「雛鶴源氏物語」では、光源氏の相手女性の内の1人である「若紫(わかむらさき)」、「末摘花(すえつむはな)」とのストーリーが描かれています。
若紫(わかむらさき)ストーリー(要約)
それまで関係を築いてきた「藤壺の宮」との関係がすっかり疎遠になってしまった光源氏。
ぼんやりしている彼の前に「紫の上」という年端もいかない少女が現れます。
「紫の上」は光源氏が思い慕っていた「藤壺の宮」によく似ていたので、自分の近くに置いておきたいと考えました。
末摘花(すえつむはな)のストーリー(要約)
琴の演奏がそこそこの腕前であると話題になっていた「末摘花」でしたが、その顔を見た瞬間に光源氏はげんなりしてしまいます。
理由は、「末摘花」の容姿。
「不細工で胴長、先が垂れて赤くなった象のような鼻をした女性」
光源氏は「どうしてあんな女性に魅力を感じ、触れてしまったのだろうか」という意味の句を詠むほど、自分の行動に疑問を感じながらも「紫の上」と仲睦まじい関係を築いていきました。
「雛鶴源氏物語」に描かれる「紫の上(=若紫)」と「末摘花」。
ともに、雛鶴の
存在とは何の関係性も
見い出せません。
必ずしも光源氏の相手として登場した女性が宇髄天元の嫁のモデルとなっている、
という可能性はないと考えられます。
須磨(すま)の名前の由来
須磨は、宇髄の嫁の2人目。
泣き虫で、「味噌っかす」を自称する19歳。
「遊郭編」では、吉原に棲まう鬼を見つけ出すべく「ときと屋」に潜入。
花魁に化けた「堕姫」に捕まってしまい、地下に監禁されていたところを伊之助に救われました。
須磨で暮らす光源氏のストーリー(要約)
既に結婚相手が決まっていた女性「朧月夜(おぼろづきよ)」。
彼女に会うため、何度も右大臣の元へ通った結果、光源氏は政界の怒りを買いました。
華々しい日々を過ごしたものの、世間に辟易した光源氏。
自分が悪い意味で目をつけられていることを察し、島流しなどの罰を受ける前に隠居を決意しました。
光源氏は、財産や領地などを全て
「紫の上」に遺し、平安京から須磨へ
一旦身を隠すことになります。
平安京:現在の京都府京都市中京区付近
須磨:現在の兵庫県神戸市須磨区
時系列でいえば、「紫の上」とは面識がある段階、つまり雛鶴の項でお伝えした内容より後の話になります。
光源氏の「須磨」での暮らしは侘しく、寂しいものでした。
しかし、漢詩や和歌、絵画を嗜んで気持ちをごまかしつつ、明るく楽しく振る舞う日々を過ごしていました。
須磨は泣き虫で騒がしいキャラです。
同時に、まきをにぶたれた自分を見ていなかった宇髄天元に対し「ぼんくら」などと罵るほどの豪胆さも持ち合わせています(「鬼滅の刃」23巻204話)。
源氏物語の須磨の物語とは裏腹に、意図的にデフォルメされ、平和的に描かれている印象を受けます。
「源氏物語」における人間関係の
複雑さや女性たちの悲壮感が
反映されている様子はありません。
まきをの名前の由来
宇髄の嫁の3人目、まきを。
勝ち気で活発な性格の20歳です。
「遊郭編」では、吉原に棲まう鬼を見つけ出すべく「萩本屋」に潜入。
「堕姫」に捕まって拷問を受けており、地下に監禁されていたところを伊之助に救われました。
おそらくは、書物である源氏物語を意味する「巻」からきているのだと考えられます。
「巻」という漢字の意味について、漢字の語源辞典には以下の記載があります。
- 「まく」
- 「長い物の一方を中心としてくるくるとまとめる」
- 「束ねる」、「まとめる」
- 「収束する(分裂・混乱していたものが、まとまって落ち着いた状態になる)」
- 「とりまく」、「囲む」
- 「くるくると回して上に上げる」
- 「登山で、ルートの途中にある難所を避け、迂回して登る」
- 「テレビ・演劇などで、予定した時間よりも早まる」
- 「言葉も出ないほど驚いたり、感心したりする」(例:舌を巻く)
- 「酒に酔って、内容のないこと、不平などを繰り返し言う」(例:管を巻く)
- 「ひざが曲がる」
- 「まがる(曲)」、「まげる(曲)」
- まき(巻物や書物。また、それを数える語)」(例:上巻)
- 「握りこぶし」
- 「髪が美しい」
(引用元:語源辞典)
「源氏物語」における「巻」は、
2の「束ねる」「まとめる」以上の
意味を持たないのかもしれません。
しかし、概念的に見れば、「巻」という言葉で「源氏物語」全体を表現しているともみなせます。
つまり、それは主人公である光源氏と彼を取り巻く女性を指していることになり、名前としての役割を充分担っていると考えられます。
雛鶴(ひなつる)/須磨(すま)/まきをの名前の由来
まとめると、雛鶴(ひなつる)/須磨(すま)/まきをそれぞれの名前の由来は以下の通り。
雛鶴:「源氏物語」の「雛鶴」という名称を冠する物語
須磨:光源氏が隠居した「須磨」という地域
まきを:「源氏物語」という書物の数え方
彼女たちの名前の由来は、
「源氏物語」と深く関わりの
あることがわかりました。
3人の嫁を持つ宇髄天元のモチーフは光源氏?
宇髄天元の3人の嫁の元ネタは、「光源氏」であることを考察してきました。
そうすると、宇髄天元のモデルは光源氏自身だと結論付けることができそうです。
忍の家系に生まれた、特殊な経歴の持ち主。派手さにこだわる一方で、冷静に状況を見極め的確な判断で任務に臨むなど、忍としての心得を十全に発揮して戦果を挙げた。
(中略)
音柱を忍として育てた父は、他者の意思を尊重しない無機質な人物だったという。父のようになりたくないという気持ちから、音柱は自分の命を二の次に考え、妻や堅気の人々の命を優先する信条を持つようになった。
(中略)
兄弟九人のうち三人が(中略)過酷な修行で死亡。残った六人は、父親の命令により殺し合いをさせられています。
(引用元:鬼滅の刃公式ファンブック「鬼殺隊見聞録・弐」)
このように、音柱・宇髄天元は物語登場時より既に大切な家族を失っています。
それも、鬼の仕業ではなく自分の家族の手によって。
その結果、妻や堅気の
人々の命を優先し救うために
鬼殺隊に入隊します。
一方で、「源氏物語」の中で描かれている「光源氏」は、一見華々しい人生を送っているかのように見受けられます。
実は、色男の代名詞ともいえる「光源氏」も作中で非常に大切な人を失っているのです。
宇髄天元も光源氏も大切な人を失っている
宇髄天元は嫁が3人もいるだけでなく、吉原では炭治郎たちを潜入させるため自分の容姿を武器にするほどよくモテています。
これは光源氏も同様。
『夕顔』の巻までは、光源氏の憧ればかりが描かれています。
源氏の美しさや教養、心の優しさなどだけを読むと、何をやっても優れている源氏は人間として理想的です。
こんなに優秀な人間はもはや人間ではない、神ではないのかと思えます。
『源氏物語』研究/ベロバ・ナディア・フリストパ
このように光源氏も
「光る君」などと呼ばれ、
完璧な男性として描かれます。
しかし、光源氏の「完璧」は「夕顔」の巻まで。
「源氏物語」では、光源氏がもっとも愛した「夕顔」という女性が不審な死を遂げます。
こちらについても様々な考察が飛び交っていますが、概ね「かつて関係のあった女性(六条御息所)の生霊が呪い殺した」という結論が大多数を占めています。
つまり、光源氏も宇髄天元同様、「大切な人を大切な人の手にかけられ、失っている」のです。
「宇髄天元」の名前の由来は「源氏物語」の紫式部の生まれた年号
宇髄天元の3人の嫁の名前の由来は、源氏物語と深く関わりがありました。
最後に当の本人である音柱・宇髄天元の名前の由来も考察します。
天元には次のような意味があります。
- 万物生育のみなもとである、天の元気。
- 天子。君主。
- 碁盤の目の中央にある黒い星。
- 囲碁の七大タイトルの一。昭和51年(1976)創設。
天元戦の勝者がタイトルを手にする。
「世界の中心」、「世界を統べる」といったイメージの意味合いが強いです。
いいか?
俺は神だ!
お前らは塵だ!
(中略)
俺が犬になれと言ったら犬になり
猿になれと言ったら猿になれ!!
猫背で揉み手をしながら俺の機嫌を常に伺い
全身全霊でへつらうのだ
そしてもう一度言う
俺は神だ!!
(引用元:鬼滅の刃9巻71話8ページ)
実際、作中でのこのよう発言からも、「自分が中心」というイメージをキャラクター設定に活かしたかったのでしょう。
この「天元」ですが、実は「源氏物語」の作者である紫式部の生まれ年であると言われる「天元元年」が由来だと言われています。
近年の研究では、天禄元年(970年)から天元元年(978年)の間に生まれ、寛仁3年(1019年)までは存命したとされる。
ウィキペディア(紫式部)
一部のSNSでも話題になっていました。
源氏物語作者の紫式部の生まれ年が“天元”元年の可能性がある
宇髄宇髄の名前の由来のひとつに「紫式部の生まれ年」が含まれていることで、3人の嫁との一段の結びつきを感じられると思います。
まとめ:天元と3人の嫁(須磨・まきを・雛鶴)の名前は「源氏物語」に由来
3人の嫁(須磨・まきを・雛鶴)の名前の由来と天元自身のモデルについて考察してきました。
ポイントは、全て紫式部の「源氏物語」と密接に関わっているということ。
宇髄天元の3人の嫁の名前の由来については以下の通りです。
- 雛鶴(ひなつる)
「源氏物語」において「雛鶴」という名称を冠する物語より。
しかし、この話に登場する「若紫」や「末摘花」とは関係がありません。 - 須磨(すま)
光源氏が俗世に疲れ逃げるようにして隠居した土地を指す言葉です。 - まきを
「巻」という言葉で「源氏物語」全体を表現する言葉。
雛鶴と須磨の要素が束ねられ、1つのまとまりとして光源氏、
つまり天元を支えるモチーフを担っているように感じます。
光源氏の相手として登場した
女性が、宇髄天元の嫁のモデルと
なっているわけではありません。
つまり、「天元の嫁3人の個性がそれぞれ反映された名前」ではなく、「嫁3人の名前からそれぞれ連想されるものが、宇髄天元というキャラクターを表すヒントになっている」可能性が高いです。
そして、その宇髄天元こそ「光源氏」がモチーフであると考えられます。
「光源氏」と「宇髄天元」の共通点は、大切な人を大切な人の手にかけられ、失っていること。
「一夫多妻制」という設定と
合わせて、光源氏という存在が
宇髄天元を表現しています。
「天元」という言葉の意味、そして彼の発言だけをみると、以下のようなイメージになります。
- 世界の中心
- 世界を統べる
しかし、全ての考察を含んだ上で、「紫式部の生まれ年:天元」という事実と照合すれば、「源氏物語」と「宇髄天元」のテーマの一致が如実に浮かび上がります。
「源氏物語」は、難しい表現も多く、とっつきづらい古典作品かもしれません。
学校の授業で習い、苦手意識がある方も多いです。
しかし、「宇髄天元のテーマになった物語」という視点で改めて読んでみると、また違った見え方になると思います。
「鬼滅の刃」とあわせて、後世に
残る名作「源氏物語」をもう一度
手に取ってみてはいかがでしょうか。
宇髄天元が大活躍する「遊郭編」については、「鬼滅の刃アニメ2期はいつから?どこまで?遊郭編では宇髄天元が大活躍!」をご覧ください。
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